大変お待たせいたしました、『月の平均台』、客演インタビューは7人目、最後に登場願いますのはおなじみ代田正彦さんです。代田さんのインタビューは最多の4回目になります。神奈川県出身。

服部:ここ一年のですね、演劇活動について教えていただけますか。
代田:えー、去年は何をやってたんですかね、よく覚えてないんですが。ネバールーズを3月にやって(*1)、ムラムラギッチョンチョンをやって、そのあとまたネバールーズですね(*2)。で、秋に、カタカタ祭りやって、それで冬にあのー、フジテレビのお台場お台場SHOW-GEKI城だったとおもいます、
服部:ありがとうございます。今回、森の話っていうことで、森のなんか思い出とか、イメージというか、あれば教えていただこうかな、と。
代田:漠然としてますね。
服部:ずっーと、関東にいたら、あんまり山登りの経験とかは、
代田:いや、高校のとき山岳部だったんで。あと大学は、勉強しませんでしたけど、林学科だったんで、演習林に行ったり、まあ、卒論を書いたんで、2、3回、山に資料取りに行ったりってことはしてます。
服部:へー。
代田:あと、今住んでる所沢が武蔵野で、広葉樹林があるんですね。狭山湖の周辺とか。
服部:じゃ、夜の森のイメージみたいのは、けっこう具体的に記憶として、
代田:それは、キャンプですよね。山登ったら、夜は泊まるんで、夜の暗い感じっていうのは、わかります。中学のときはキャンプが好きな友達がいたんで、日光の山に行って、春先にキャンプしたりして。
服部:なんか怖い思いとかしたことあるんですか。
代田:怖い思いはないですね、意外と明るかったりします、星が出てると。星が出てないと相当暗いですけど。


舘ちんとはどの公演でも共演、ずーっと並走してきたここ1年の代田さん。豊富な木々の記憶をもって、『月の平均台』に参戦です。


服部:夫がいなくなった妻を探しに行くっていうストーリーにちなんで、大切な人ですとか、ものですとか、そういうものをなくしてしまったみたいなエピソードをいろんなひとに聞いてきたんですけど、なんか代田さんの思い出の中で、教えていただけますか、
代田:難しい質問ですね、んー、でも大事っていっても、なくしてほんとに後悔することってのは、ぼくはあんまりないですね。忘れるしかないというか。まあ、大体諦めます、ものでも人でも。
服部:おお。でも確かに、取り戻せないものだと、そうですよね。けっこう諦められるほうですか?
代田:いろんなことを忘れますね、ぼくは。いいことも、わるいことも、どんどん忘れちゃうほうなんで、全然。友達のことも忘れちゃいます。
服部:そうなんですか。
代田:ほんとひどい話なんですけど、あの、前にご一緒した役者で、作家でもあるんですけど、SつかKへいさんという方がいらっしゃるんですが。大学のときの同学年で、ぼくは演劇研究部、彼は別のサークルにいたんですけど。うちの演劇研究部は、公演の打ち上げは一晩中酒盛りやって、来てるお客さんみんなと飲んで話をするんです。そこど、まあサークル違うけど一緒にがんばろうぜ、芝居やろうぜ、みたいな話を彼としたんですけど、ぼく、大学3年ぐらいから学校にあんまり行かなくなっちゃったんですね。それで、すっかり忘れちゃったんですよ、彼のことを。
服部:Sつかさんのことを、
代田:はい。Sつかさんのことを。で、あるお芝居で一緒になったんですけど、そのときに、ご挨拶して、「へーそうか、SつかKへい、つかこうへいみたいな名前の人だなー」って思ってたら、どうも大学が一緒らしい、っていう話になって。
服部:まだそこでもピンと来てない?
代田:ぴんと来なかったですね、そのあと一緒に飲んで、ああ、そういえば、みたいな感じで。
服部:それは思い出したんですか、ちゃんと。
代田:それは思い出しましたね、さすがに。でも言われて思い出すのは、「思い出した」っていうのか・・・言われて思い出さなかったら問題じゃないですか。記憶障害ですよね。


主浜さんに続いて、忘れてゆく種族を発見。飲みすぎだったんじゃないのかしら。再会できてよかったですね。学生の頃の話といえば、しろたんからは恋のお話も聞けました。こっちは忘れられない?


代田:まあ、あとは、人で執着してるっていうのは、好きだった女の人っていうのはありますけど、
服部:その話、いけますか、
代田:人生で一番忘れられないのは、初恋の人と、別れるっていう、
服部:それはいつごろの話なんですか。
代田:大学生のときですね、
服部:それは、突然相手がいなくなってしまったとか、そういうことなんですか。
代田:ま、ようは振られたんですね。ちょっと細かい事情は、いろいろあるんですけど、付き合い始めて、バイトの関係で2週間くらい会わなくて、帰ってきたら、ごめんなさい、っていう話になってしまってそれっきりだったんですね、
服部:やっぱりこう、受け入れるのに時間がかかりましたか、
代田:かかりましたね、それは。彼女に捨てないでくれってすがりましたね。
服部:相手にですか、
代田:そうです。けっこうかっこいいこと言ってたんですよ、付き合いはじめの頃は。もしも別れても今まで通り、仲のいい友達でいよう、とか言って。で、2週間のバイトから帰って来たら、ごめんっていう話を切り出されて。「ああ、いいよ、約束どおりに、友達として仲良くいこうね」みたいな話になったんですけど、でも、駄目だったんですね、これが。
服部:その、つきあう前と同じようには、
代田:ならなかったです。で、すがりましたね、もっかいつきあってほしいみたいなこと言ったりとか、ぐじぐじ電話したりとか。なんだっけなあ、郵便局から出せる電子メールの郵便版みたいのが昔あって、それで、「ごめんなさい、もうつきまといません」みたいなメールというか手紙を出したりとか。なんで普通郵便で出さなかったか忘れましたが。とにかく悪いほうへ、悪いほうへ。彼女も最初はゴメンね、みたいな感じだったのが、だんだん怒ってきて、話が違うじゃない、みたいな感じも若干あったっていう。そこで初めて、自分が別れた女の人と友達になれない人間だってのが、わかりましたね(笑)。それぐらい本気だったとは思うんですよ。今だったらもしかしたら、あんなに、関係をこじれさせたりしないとは思いますが。
服部:なんか、不思議ですよね、人間同士は変わらずいるわけじゃないですか、お互いに。でも、その関係というか、ムードが取り戻せないっていうのって、不思議っていうか、やるせないなって、
代田:その、「好きだった」というエネルギーがなくなっちゃうみたいな感じがいやなんだと思う。
服部:ふーん、相手が自分のことを?
代田:いや、自分が相手のことが好きだったっていう、
服部:エネルギーが。なくなっちゃう?
代田:だって、なくさないと、つきあえないじゃん!ふつうの、元の関係にもどるってのは、
服部:ああ、はいはいはい、
代田:なかったことになっちゃうわけでしょ?それがたぶん俺はやなんだよね。だから戻れない、それだったら壊れた方がいい、ぐらいの。傷跡として残る、ってカタチですけど(笑)。普通の関係に戻っちゃったら、なんかなくなっちゃう感がしないですか、
服部:その、つきあってた時間が?
代田:自分が好きだったってことが。いや、でも、それは時間がたてばだんだん解決するじゃない。だから今はもう、彼女も結婚してますし、普通に付き合えますけど、でもすごい距離がある、
服部:そうですよね、当時のまんまってわけではないですよね。


深い話を聞いてしまいました。しろたんの熱い想い、今でもその余熱が感じられます。そしてもちろん、芝居熱。


服部:あなたは、おとなですか、子どもですかという質問も、何人かの方にしてきたんですけど、
代田:最近、だんだんバカができなくなってるみたいなところがあります。そういった意味では大人になって来ているのかも。
服部:舞台上で?
代田:うん。理由がわかんないんですけど。うーん。なんか迷ってるのかもしれないですね。
服部:んー、
代田:昔は色々関係なくバカができたんだと思うんですけど、バカをやるのに時間がかかるようになって来たというか、、、

森のなかで、代田さんが縦横無尽に暴れまわる『月の平均台』、6月3日まで。下北沢駅前劇場でお待ちしております!お見逃しなく!


インタビュー:2008年5月11日


代田さんのグッボイス:
http://torihitori.seesaa.net/article/98362841.html

北区つかこうへい劇団:
http://www.tsuka.co.jp/


*1:『廃校/366.0【後日譚】』 作・演出:片山雄一、07年3月、名古屋
*2:『廃校/366.0【後日譚】』 作・演出:片山雄一、07年7月、東京芸術劇場

 
 
 

 

 

 

 インタビューリスト
 ・ 成田亜佑美
 ・ 藤田貴大
 ・ 召田実子
 ・ 土田祐太
 ・ 主浜はるみ
 ・ 西山竜一(無機王)
 ・ 代田正彦(北区つかこうへい劇団)

 

  


  
 

  
 

  
 

  
 


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