『月の平均台』、客演インタビューは6人目、久しぶりに西山竜一さんにご登場願いました。タテヨコ企画の常連として支え続けていただいている西山さん、インタビューも3回目になります。今回のインタビューでは、なぜか横で成田あゆみっくすが聞いていました。遂にぼくのインタビューに、観覧者が出ましたよ。


西山:これはなに、ネットで流されるの?声が、
服部:あ、声流すのはあとで、それもやるんで、
西山:マジで?
服部:あの、竜一さんのことを知らないリスナーの方に、
西山:リスナー?流すのこれ?
服部:流さないです!出身地と、誕生日を、もう一回、教えていただいて、
西山:えーと、福岡県、北九州市、八幡の出身です。1976年、9月7日、おとめ座です。
成田:おとめ座って面白いね。
西山:何でだよ!
服部:いつこっち出てきたんでしたっけ。
西山:18のときに。えー、専門学校に入るために、あと、アメリカに行きたかったんですよ。
服部:え、高校卒業してってことですか?え、それは初耳ですね。
西山:アメリカで演劇の勉強したかった、はははは。
服部:まじですか!うわー、すごい新エピソード。それはわりと具体的に計画したんですか、ちょっと調べたりとか、
西山:TOFLE受けるのが、無理だな、と思って。へへへへ、
服部:あ。そこで、そこで挫折をみたんだ。
西山:小さい頃から、英語塾とか行ってて。けっこう、中3ぐらいまでは俺、英語得意で。英検とかね、3級ぐらいまでいったのかな。そっからもう、ぜんぜん英語勉強しなくなって。中学に入って、まあ、普通に英語の勉強してるうちに、みんなに抜かれつつ。
服部:え、今はどうなんですか、あんまりやっぱり、
西山:今は、まったくわかんない。こないだ、英語で芝居をやるっていうWSに1年間参加しようとして、行ったんだけど、
服部:ええ、ええ、ええ、
西山:まったくついていけなくて、すぐやめちゃった。
服部:あー、そうなんですか、わー。
成田:んふふ、もったいないね、
服部:え、じゃ、海外で演技することに対する興味とか、
西山:あー、あるけど、
服部:海外公演みたいのとか、
西山:あ、やりたいね。
服部:ぼくはやったことないんですけど、言葉が通じない人に、ああいうのって、どういうふうに伝わるものなんでしょうかね、なんか。もちろん、字幕とかは出ると思うんですけど。その、言葉が通じないもので、
西山:やっぱりその、日本人が日本人の文化の中で発信するような劇の方がいいんじゃないかな。あの、シェイクスピア持ってってもね。向こうのイギリスなんてもっと専門的に学んでる人たちがごまんといるだろうからね、
服部:こっちの持ちネタというか、文化にあるもの、
西山:それがいいんじゃないの?英語のWSやってるときも、日本人がしゃべる英語でいいんだっつってた。
服部:その、発音のうまいとかじゃなくて、
西山:それよりもまず文化を学んだ方がいいのかなって思う、俺とか。たとえば、味噌汁の作り方を知ってるとか、日本の歴史をよく知ってるとか。そういう人たちの方がやっぱ海外で受け入れられるらしい、
服部:あー、
西山:日本舞踊でも習おうかな。漢字とか。
服部:へー、面白いな。それは、この1年の間に、行ったんですか。
西山:行った。何回か行ったけどスケジュールもちょっと合わなくなってきて。
服部:ここ1年の演劇活動みたいなのって、思い出せますかね。
西山:去年の春に、タテヨコの人たちとも一緒だけど、何人かと名古屋に、ネバールーズで行って、(*1)
服部:あれですよね、あの、池袋に戻ってきたやつ、(*2)
西山:うんそう、あれ夏だったよね。
服部:はいはい。その後が?
西山:タテヨコ。年末の、クリスマス。
服部:あ、そうなんですか。あれ、ぽてとどうって、
西山:ぽてとどうは、今年、3月。(*3)
服部:じゃ、ネバールーズ、お台場、ぽてとどう、で、今回と。
西山:あ、ネバールーズの間に、俺、リーディング出てるわ。横浜の、相鉄本多で。シェルフの矢野さんの。(*4)
服部:それはなにのリーディングだったんですか?その作品、
西山:岸田國士を読むっていうやつ、


西山さん、精力的に活動してます!しかし、アメリカ行きたかったとか、英語得意だったとか、ちょっと意外だったなぁ。海外進出も、近い?さて、そろそろ話を『月の平均台』に移していきましょう。


服部:今回あの、妻がいなくなっちゃうっていう話じゃないですか。で、大切なものとか、大切な人とかが、なくなっちゃったり、いなくなっちゃったりしたエピソードみたいなのをみんなに聞いてきたんですけど。なんか、西山さんのとびっきりの、失ったエピソードがあれば。
西山:夢、かな。
服部:マジで?
西山:うそうそ。犬がね、亡くなったときね、俺、寮生活してたの。中高。
服部:あ、そうなんですか、
西山:おふくろから電話かかってきて、あの、犬、ジャッキーっていうんだけど、ジャッキー死んじゃったよ、って。まあ、学校があるから帰ってくるかどうか、あんたの自由なんだけど。あの、両親ともふたりで寿司屋やってるんだけど、いま家でひとりで寝てるよ、って話を。
服部:へー。それ、いつのときなんですか。
西山:中学かなー、たぶん。俺は、親が死なない限りは寮から出れないと思ってたのね、その頃、なんか。そういう、特別な用がないと外出禁止っていう。犬が死んだくらいじゃ帰れないよ、俺って。
服部:うんうんうん、
西山:すごい悲しかったは悲しかったんだけど、その、一人で、一匹で横たわっている犬を想像しながら悲しい気持ちにはなったんだけど、帰れなかった。おじいちゃんが死んでも、俺、帰れないって言ったら、親父に怒られた。(笑)言えば帰れるから帰って来いよ、って。だって外出禁止だっていうじゃん。
服部:けっこう小さい頃から、飼ってた犬だったんですか、ジャッキー、
西山:5年位かな。・・・小さい頃、人の死に対しても、どうしていいかわかんないっていうか。お葬式に行くって、どういうことかもわかんない、っていう記憶がある。
服部:なんだこれは、みたいな。
西山:生活を断ってまで行くもんなのか、って。けど、なんか、なんも考えてなかったんだろうね、たぶん。それで親父に教えられたのかな、その、おじいちゃんが死んだときに、行かなーいみたいな感じでいたんだけど、そうじゃないだろうって。
服部:死ぬってそういうことじゃないぞみたいな感じ?
西山:そう、そのお葬式に出るとか、そういうことって。今でも、個人個人が喪に服せばいいんじゃないのって思ってるふしはあるんだけど、
服部:どうなんですかね、でも、そういうのって。
西山:でもけじめだったり、みんなに顔を合わせて、その人たちを悔やんで、みんなでこう納得して帰るっていう風なのはあっていいと思うし、まあ、家のこととかもあるからね、そのやる側はやっぱりみなさんに集まってもらって、お礼を含め、お別れを言ってもらいたいっていうのもあるから必要だとは思うんだけど。つながってるっていう、生き方してるじゃない日本人って、そういうこと大事にするっていう。
服部:ああー。これでも、亡くなってもつながってるみたいなイメージじゃないですか。たとえば、今回のお芝居のとかで、生きてるんだけどいなくなっちゃうとか、こう、西山さんの役とかでも、山に来ちゃう、森に来ちゃう、とかって。そんなときの立場とかっていうのは、今まで暮らしてたところと、ぶった切ってるって、いう、設定なんですかね。
西山:まだわからないの。横田さんはそう書いてるんだろうと思うけど。町に買い物に行ったりしてんじゃないかって、想像もつくし。森に住んで3ヶ月なんだけど、他の森の登場人物よりはまだ新入りで。自給自足って、そうできるかなーと思って。
服部:実際問題としてね。
西山:だからそんなに森深くにはいないと思うから、
服部:境界というかまだ、ちょっと出たりとか、
西山:会わないにしても、なんか、ま、お金もそんなにないんだと思うんだけどね、
服部:パクってくるとか、ごみ漁るとかはできますよね、きっとね。
西山:はははは。
服部:ここ(成田さん:西山さんの妻役)は切れないんだ。その、自分ひとりで来るわけじゃなくて、
西山:あー、そう、そうね。
服部:うーん。だから、そうすると、妻、主浜さんの役とはちょっと違うのかなって、思って。なんか西山さんたちは、ペアで森に来てるじゃないですか、
西山:うんうんうん、
服部:大切なものを捨ててくるとか、なくしてくるっていったときに、でも抱えてくるものもあったり、人によってはあるじゃないですか。その辺の、大切なもの、側に置いておく大切なものと、捨ててくる大切なもの、そういうのを選ぶって、どういうふうに、選ぶのかなーって思って。


ええ、服部が迷走し始めたので、閑話休題。この後、しばし今回のお芝居についていろいろお話しました。さて、実はこのインタビューの当日、西山さんの「大切なもの」が節目を迎えました。


服部:あの、大切なものということで、無機王の話とかは、
西山:うん、今日、劇団が解散しました。メールが来て。
服部:どうなんですかね、この話は。
西山:まあ、いずれそうなるんだろうなあって。あ、動いたって、山が動いたって感じ。実家に帰って連絡がつかなくなってたの、主宰が。
服部:ああ、そうすると、追うっていうか。
西山:追ったりもしたんだよね。俺は、いなくなる少し前に、甘えるな、頑張れみたいな感じで会ったんだけど、今思うと、それも当時の彼には辛かったんじゃないかな。いなくなっちゃったあとは、ノータッチでいたの。でも違う劇団員は会いに行ったりとかもしたんだけど、やっぱり箸にも棒にも的な。でも、彼がやりたかったものがなくなったときに、何が残るのかっていったら、何も残んない。実家でなんか、ぷらぷらしてたみたいで。でも、人は疲れることもあるんだしちょっと休憩。またいつか、ずーっとずーっと先にでも、一緒にお芝居出来たらいいけどね。
服部:そういうのとかも、自分の大切なものじゃないですか。で、一緒に芝居をやるっていう部分でやってきて、ま、なしにしようっていうふうに言ってきてるから、何も言わずにいなくなっちゃうのとは違うんですけど、うん。
西山:何も言わずにいなくなったんだよ、最初は。で、一年ぶりくらいに、連絡が来た。
服部:ええ。別になんか、結論が出る話ではないんですけど、なんかそういうのって、みんなあって、たぶんなんかそのことについて気になるだろうなと思って。ぼくは、けっこう今回、大切なものがいなくなっちゃった旦那の話っていうので、どんなになるんだろうって思ってるんですけど、
西山:でも、そんなに大切だったのか、っていうところまでなっちゃってるよね、出だしは。
服部:まあ、これ以上は・・・。あと、今回のお芝居の勝負どころみたいなのとかって、なんかどうですかね、けっこう違うじゃないですか、今までと、
西山:誰が言ってたかな、転機になる芝居にはなると思うよね、って。失敗するかもしれないけどって。あのー、可能性は探りたいな、って思ってる。で、俺が参加することで、なんか、いい方向に転がればいいなって。みんなもそう思ってるんだろうけど。人がいるからタテヨコの作品があるわけで、その中に参加してる一員として、なんかいい方向に進むようなきっかけを与えられればいいなとは思う。で、自分もなんか、もっとやりたいこととかが認識できればいいなっていう。こういう芝居がやりたいっていうことを、その「こういう」の部分を。
転機のタテヨコ、節目の西山、下北沢駅前劇場の『月の平均台』、5月28日、いよいよ開幕です。お見逃しなく!



インタビュー:2008年5月3日



西山さんのグッボイス:
http://torihitori.seesaa.net/article/97962514.html


*1:『廃校/366.0【後日譚】』 作・演出:片山雄一、07年3月、名古屋千種文化小劇場
*2:『廃校/366.0【後日譚】』 作・演出:片山雄一、07年7月、東京芸術劇場 小ホール1
*3:菅間馬鈴薯堂(すがまぽてとどう)『鯨屋の客』 脚本・演出:菅間勇、08年3月、王子小劇場
*4:横濱・リーディング・コレクション#3 「岸田國士を読む!」 07年8月、相鉄本多劇場

 
 
 

 

 

 

 インタビューリスト
 ・ 成田亜佑美
 ・ 藤田貴大
 ・ 召田実子
 ・ 土田祐太
 ・ 主浜はるみ
 ・ 西山竜一(無機王)
 ・ 代田正彦(北区つかこうへい劇団)

 

  


  
 

  
 

  
 

  
 


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