ムラムラギッチョンチョン客演インタビュー、トップバッターはご存知、しろたんこと、代田正彦さんです。代田さんは、2004年の『宇宙ノ正体 番外編』、2005年『すくすく』、2006年『春のズボンと秋のブラシ』と、毎年タテヨコ企画の公演に出演していただいています。


服部:代田さんには三度目のインタビューということで、
代田:はい。
服部:もう、話すこともないかとお思いでしょうが。
代田:はっはっは、そんなインタビュアーありなの?
服部:いやいやいや。最近はもう、タテヨコといえば代田さんという感じで出ていただいておりますが。
代田:そんなことはないですよ。もう飽きられる。
服部:今回の「宇宙ノ正体」、代田さんにとっては、二度目なんですけど、なんかそういうのってあるんですかね、シリーズ的な感慨、みたいな。
代田:シリーズ物の感慨っていうのは、キャスティングも変わったんで、あんまりないんですけど。「宇宙ノ正体」はタテヨコで最初にやった作品で、自分も北区つかこうへい劇団以外の、ぜんぜん違うグラウンドでやってみて、初めて「なんか面白いことやれたな」みたいな。
服部:それが番外編のとき?
代田:そう、番外編のとき。自分もチャレンジだったんですね、宇宙ノ正体やるのは。何ができるかわからなかったんで。それから、宇宙ノ正体・番外編は、稽古期間がすごく長かった。
服部:あ、そうか。山口もありましたもんね。(*1)
代田:そうなんですよ、で、山口に行った後に、東京のための稽古をやるっていう、すごい贅沢な作り方をして、おかげ様で、面白いものができたと思うんです。
服部:うんうん。
代田:で、今回の稽古を見ていて、横田さんはお坊さんが好きなんだと思うんですね。
服部:ははは。
代田:それは、変な意味じゃなくて。興味があるんだと思うんですね。ちょっと特殊な人たちだとは思うんですよ、その、生と死っていうのに近いところにいる人ってことで。タテヨコは日常芝居なので、ちょっと特殊な人が出ると、華が出ていいかも知れないですね。
服部:ハナ?
代田:なんていうかな、日常の芝居って、誤解を恐れずに言えば、地味だと思うんです。それは、普段の人間の生活は地味なもんだし、地味の中での時期によって派手になる時ももあるわけだけど、なんていうか、そういう特殊なポジションの人がいるとアクセントになっていいのではないかと。平田オリザさんのお芝居で、ぼくが一番好きなのは、『転校生』っていう女子高生ばっかりが出演していたお芝居なんですが、平田さんの芝居も地味なところあると思うんですけど、いや、単なる地味じゃないですけど(笑)。客に積極的なサービスをするという意味では地味だと思うんです。それが、女子高校生の華やかさがぱーっとでると、見世物としてちょうどいいバランス具合だったんですね。それに近くて、その、横田さんの芝居は実は劇的な事がたくさん起きてるんですが、リアリティを非常に大事にしてるんで地味めに見えるところがあると思うんです。なんていうんだろう、過剰なサービスとしての派手さはないと思うんですよね。だから出てる役者さんは、ちょっとアクが強いぐらいでも存在感が強いほうがいい。
服部:うんうんうん。
代田:人間みんな、存在感ってあるはずだけど・・・違うじゃないですか、役者さんによって、存在感の強さって。なんで違うかを考えると、なんか、怖くて、なかなか・・・。
服部:簡単には言えない?
代田:そう、自分自身に跳ね返る問題だから・・・。でも明らかに違いますよね。
服部:違いますね。
代田:お話自体がストイックだからこそ、役者は、派手というか、存在感の強い人がでると見世物としていい具合だなーと。素材の味を生かせるというか。台本にごてごてしたところがないので、役者の味が非常に際立つお芝居になると思うんですね。ところで、今回お坊さんの会話が、ちょっとヒトゴトみたいに言いますが、すごい面白い。
服部:おー、おー、おー、おー。
代田:お坊さんたちのメンツのパワーによるところも大きいんだけど、最初の出だしのところの会話が、つまんないところがまったくない。もう全部面白い、と思うんですよ。ダイアローグが面白い。それって大事なことじゃないですか。普通のお芝居だと、なんか捨て台詞っていうか、面白くないセリフをしゃべったり、
服部:そういうシーンが、出ちゃいますよね。
代田:いや、でもほんとはそれはダメだと思うんですよ。全部の会話、どこをとっても面白くないといけないと思うんですよ、
服部:うん、うん。
代田:でも、設定を説明しなきゃいけなかったり、必要にかられてつまんないことをしゃべったりするじゃないですか。それを演出で面白く処理したりする。そういう肉づけじゃなくて、骨格である台本の会話そのものがすごく面白い、
服部:うーん。
代田:それを面白い役者がやってるから、もう、とにかく面白い、つまんないところがまったくない、これはすごいことだと思うんですよ、
服部:それはアレですかね、横田が「お坊さん好き」っていうことで、うまくセリフを書けたとかいうところがあるんですかね。
代田:それちょっと!そうやってね、まとめようと思って今までずっとしゃべってたんだけど!
服部:失礼しました。


思いがけずしろたんからの大絶賛をいただいたところで、ふと、代田さん自身のお芝居の
作り方をたずねてしまいました。


服部:代田さんが、役作りというか、せりふを相手役と話すときに、全体の雰囲気とか、こういう絵の中に、「だから、僕はここに立ってみよう」というのは、考えてやるんですか?
代田:いつもなんとなく、ですね、出たとこ勝負(笑)でやってます。
服部:役の内側みたいなのは、稽古をやっていくうちにどんどんできていくもんなんですか?
代田:できるときとできないときがある気がしますね。
服部:できたときは、うまくいったって感触があるんですか?
代田:たぶん。演技する上で見た目ができてれば、内側はどうでもいいって考え方もあると思いますが、人間の内側と外側ってつながっていると思うんで。
服部:役作りとかを考えているときに、やっぱり影響してるんじゃないかと、
代田:もちろん、体だけで生きている人はいないんで。内側ができるっていうのは、なんだろう、それはその役をちゃんと理解しているかとか、感じられてるか、みたいな。頭でやるのはよくないんで、その役の気持ちみたいなものを感じられるといいのかな。
服部:それは稽古中っていうのが、大事なんですかね。その、たとえば稽古前とか。もちろん稽古前も稽古中も大事なんでしょうけど。その辺の、なんていうんだろ。
代田:稽古の時間がすごい大事です。事前準備も必要ですが。事前準備では、ガチガチに決めるんじゃなくって、なんか、
服部:あ、プランとかじゃなくて、
代田:ある程度決めておいて、稽古の時間は情報密度の濃い時間だから、そこでそれをやってみて、いけるのかどうかを判断して、その場で修正をするっていうか。たぶんうまい人はみんなそうやってると思うんですよ。昔、一度舞台でご一緒した超有名俳優の〇さんは、かっちかちに家でプランを決めて来てやってましたけど、でもお芝居は、役者間の相互の関係が大事だから、自分で決めてきたことだけやってもダメじゃないですか。稽古のときが一番の大事ですよ。稽古でやってる瞬間が。一人でやっても、感じられないでしょ、目の前の人から受ける印象とかって。想像して、こんな感じなのかなって思うような訓練は、もしかしたら家でできるかも知れないですけど、
服部:実際には・・・。
代田:情報がいっぱい得られるでしょ?本物とやったほうが。シミュレーションですね。そういう状況に自分が置かれたときに、何を感じるのか、みたいなことがわかれば、たぶん毎回、心も同じ動きができるようになる気がするんですよね。なんか、通過ポイントみたいのがあって、そこを毎回通過していけば、いつでも同じ気持ちに到達できるというか、
服部:あーあー。
代田:強い感情のほうがそれはやりやすくって、憎いとか、怒りとか悲しみみたいなの感情の方が。つかさんのお芝居はそういうお芝居で、出演者全員がちゃんとかけあいをして、通過しなければならないポイントをきちんと通過していけば、毎回最終的に必ず芝居がうまくいくみたいな。
服部:へー。
代田:そのポイントをつかむために稽古をやってるんだと思う。役の気持ちになりきっていうのとは違うんだけど、やっぱり、役に気持ちが近くなったほうが、いいお芝居になっていく気がするんですよね。でも自分に酔っちゃうのはダメだけど。
服部:相手役とちゃんと関係を作って、ってことですか。
代田:それから、ミドルトーンの感情とかは難しいんですよね。
服部:はいはい。
代田:強い感情よりもね、中間ぐらいの気持ち?黒・灰色・白・しかないよりも、グレー70%とか、グレー60%みたいな微妙な感情を、毎回再現するのは難しい。でも、実際生きてるときの感情って、そういうグラデーションだと思うんですよ、白黒はっきりした感情だけじゃなくって、グレーのグラデーション、みたいな。
服部:そこもちゃんと出せたほうが、生きてるって感じが。
代田:そうそうそう、豊かだと思うんですよね。 わかり易すぎちゃうんですよね、ベタだけだと、
服部:あー。
代田:所属している劇団で言われちゃうんですよ。お前の感情ははっきりしすぎててつまらないって
服部:そうなんだ。


さあ、ついに新兵器の登場、ムラムラクエスチョンシックスです。代田さんがひいたの
は、この札。「アレは修行だったなという思い出を教えてください」


代田:アレは修行だったなという思い出を教えてください。
服部:はい。
代田:えーっと、ひとつですよね?今いろいろ思い出してるんですけど、話して大丈夫なやつは・・・。
服部:ふふ。
代田:ぼく、脇役なんです。あんまし主役やんないんですけど。一回だけ超直球の主役を、やったことがありまして。新宿のタイニイアリスってところでやりまして。夏だったんですけど、冬のお芝居をしたんです。僕の基本的な衣装は、刑事の役だったんで、トレンチコートを着ている役なんですね。
服部:あー。
代田:タイニイアリスっていうのは、地下の劇場でして、換気よくないし、天井も低い。で、ライト焚いたらすごい暑くなるんですよ。で、クーラーかけてもぜんぜん涼しくならない。それで、冬の芝居なのに、最初から出演者みんな、汗だらだら。ひどいもんでした。派手に飛んだり跳ねたりして、熱いパッションでやる芝居だったんですけど。とにかく暑い、暑くて暑くてしょうがなくってですね、芝居の途中で、脱水症状をどうやら起こしたみたいで。
服部:えー?本番中に?
代田:ええ。あと1分くらいしたら、舞台に出なきゃいけないっていうタイミングで。女優さんとふたりっきりのシーンの前で脱水症状を起こしてですね、あまりにも辛くて、演出家に「ちょっともう俺ダメです、ダメです」ってうわごとみたいなこと言って、でもタイニイアリスってせまくて、役者がリラックスしてスタンバイできる場がなくて、ついに我慢できなくなって、タイニイアリスの地下からの階段を駆け上がり、道路にでて、それで1リットルペットボトルの水をこう、がーって頭にぶっかけて、それで何とか復活して、
服部:すごい!
代田:もう、視界がまっきっきーなんですよ、星が出ちゃって、
服部:もうぎりぎりですね。
代田:生命がぎりぎりの状態です。もうどうやっても芝居ができる状態じゃないんですけど、
服部:よく復活しましたね。
代田:すごいもんですよね、
服部:もう、ぱっと出てっちゃったんですか?
代田:がーって、頭に水かけてたんで、もう全身びしょびしょなんですけど、まあ、みんなも汗かいてるし、わかんないだろう、とか思って。で舞台に出て。ヘロヘロだったけどなんとかそのシーンをこなしました。その時は「これは何の苦行?」って思ったことは確かです。修行以外のなにものでもないな、っていう、
服部:なるほど。
代田:怖いっすよ、限界まで汗かいたりすると、人間、実際。芝居やってる場合じゃないです。


4度目の出演でますます快調のしろたんの今回の役どころは、なんと・・・!?北区仕込みのパッションあふるるラブシーンもお楽しみいただけるかもしれない『ムラムラギッチョンチョン』、劇場でお待ちしております。


インタビュー:2007年4月26日
*1:『宇宙ノ正体番外編』は、2004年10月に山口県にて、11月に東京都で上演された。

代田正彦 information
代田さんのグッボイス http://torihitori.seesaa.net/article/41006496.html
北区つかこうへい劇団 http://www.tsuka.co.jp/


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