ギッチョンインタビュー、3人目のゲストは、ムラコさんです。25歳、大阪出身。まずはタテヨコ企画とのなれそめから。


ムラコ:あー。ふしぎですよね、ぼく、相方が桜美林学生で、(*1)まあ、桜美林の団体として、High×Position(以下:ハイポジ)というのを。まあ、コントユニットみたなやつを作って、公演したんですけど。ずーっと、もう5、6年になりますかね。
服部:長いすね。
ムラコ:それきっかけで、横田さんに見に来ていただいたりとか、横田さんの芝居を見に行ったりとか、
服部:へー、
ムラコ:ちょっとずつ、交流があって。で、ハイポジで、一回本気で芝居しようというという企画が持ち上がって、じゃそれに演出は誰がいいのか、っていうところで、若き、新鋭演出家の横田さんに頼もうじゃないか、という。それ、僕がやりたかったんで、ぼくが横田さんにオファーを出しにいったんです、直接。
服部:へぇー。
ムラコ:で、ハイポジにかかわるメリット、まあ、ないじゃないですか。売れっ子じゃないですから。横田さんも忙しいヒトですから、理由づけがないと無理だろう、と。それで、「将来の、僕たちに、投資してください」と。俺たちが売れたときに、横田さんと一緒にやったってことを言うんでっていうむちゃくちゃな理由付けをしてもらって、
服部:はいはい。
ムラコ:横田さんにも、快く受けてもらって、タテヨコでやってた『夏が来ない』をハイポジ版として桜美林で公演すると。そっからですね、親密な関係というか。(*2)
服部:じゃ、そのオファー出したときは、そんなにまだムラコと横田の間では、なんていうの、「わっはっはー」て飲んだりとかは、
ムラコ:たまーにですけど、なんかちょっと相談があったときに横田さんを呼び出して、
服部:へぇー。
ムラコ:昼飯を二人で食って、
服部:昼飯二人で食べるぐらいの仲ではあったんですか、
ムラコ:あーでもない、こーでもないと言ったりとか。そういうのは、ありましたね。


仲良しじゃないか。相談役だったころの僕でさえ、ふたりで飯なんて一回位しかなかったよ。さて、そんなムラコはそもそもどんな風に芝居を始めたのか、あれ、でも、もともとは俳優さんではない・・・?

ムラコ:もともとっていうか、もう完全に芸人ですから。芸人が、役者にチャレンジする、っていう。
服部:そうか、そこから言わなきゃだめなんだね。ムラコは芸人。
ムラコ:そうです。高校二年生のときに、総合文化学科というところで、大学みたいに自分で授業を選ぶ、っていうのだったんですよ。野球であったり、テニスであったり、介護士目指してるやつは、介護のほうに行ったりとか。
服部:へー。
ムラコ:そのひとつに、うちの先生、頭おかしいんでしょうね、上方漫才研究っていう、ちょっとお笑いの歴史というか、演劇の歴史を学ぶ授業があったんですよ、
服部:それ、高校の?
ムラコ:高校の。で、今宮えびす新人漫才コンクールっていうダウンタウンさんや、ナイナイさんが初めて賞をとった登竜門的なやつがあるんですけど、素人でも参加できる唯一の大きい賞レースで。それに、授業受けてるみんなに、出たいやつは出ろと、出てみないかと。で、相方の静とは幼馴染みで、そんときは芸能系の学校行ってたんですけど、静を誘って、じゃ、一回、出ましょうか、って。ネタをその日のうちにつくって、初めて舞台に出たんですよ。それで、195組中、三位(香川登枝緒賞受賞)になったんですよ。
服部:ちょっと!すごいですね。
ムラコ:いきなりですよ、いきなり。調子に乗りましたけどね、かなり。
服部:へぇー!
ムラコ:高2のときにとったんで、そっから、一年間、卒業するまで、大阪でライブとかやって、修行して、今宮えびすの審査員の放送作家の先生(サミットクラブの師匠)に、「東京行け」っていうふうに言われて、卒業してすぐ東京に。ま、いろいろありながら、ずっと芸人を今も続けてると。
服部:じゃ、19くらいのときからもう、出てきてるんですか、
ムラコ:18ですね、
服部:相方さんとは、じゃもう、幼馴染で、ずっと一緒に、
ムラコ:はい、小学校から、小1から。
服部:あれ、じゃあ、ハイポジとは別なんですね。ハイポジは東京来てからの話なんだ。
ムラコ:そうです、で、静とのコンビ名がサミットクラブ。高2からサミットクラブ、として。
服部:そのコンク−ル三位がデビューくらいな感じなんですか。
ムラコ:もう、それがデビューですね。
服部:で、東京出てきて・・・。ハイポジっていうのは、いつできたんですか?
ムラコ:その大阪時代にファミリーっていうフットサルチームを持ってたんですよ。
服部:おっと、フットサル。
ムラコ:5人しかいなくて。その当時フットサルなんて誰も知らなかったですから。
服部:早いですよね。
ムラコ:その5人中、ぼくと静ともう一人カメラマンのやつと、3人が上京したんですよ。
服部:へー。
ムラコ:で、東京でもフットサルチームを作ろうってことで。TokyoFamilyっていう、フットサルチームを作ったんです。いまもう、7年目で、いま、130人ぐらいいてるんですけど、
服部:えー!まじっすか?
ムラコ:で、もう、東京都の、一部昇格、大学リーグの。
服部:超つよいじゃないですか。
ムラコ:超つよいです。全国も一回出ました。最初5人だったところが、
服部:ちょっと、ちょっと、どんなカリスマですか。
ムラコ:いやいやいや。で、なぜファミリーの話をしたかというと、その、桜美林の総文生ばっかりだったんですよ、TokyoFamilyの一期生は。その中で演者とか、スタッフが全部揃ってたんですよ、照明家とか、制作も。で、これでコントみたいのをしたいなあ。それが、ハイポジの一回目です。
服部:へー。じゃ、フットサルで集まった、
ムラコ:そうですね、それで一回やってみようっていって。桜美林でやって、それがたまたま評価していただいて。それで、一回、二回、三回、四回と、桜美林で公演していくうちに、こういう状況になったと。


西から東へとダイナミックな青春時代を謳歌してきたムラコ。芝居ものびのびとやってるようにも見えたのですが、芸人のときと役者のときと、どういう違いがあるのかないのか。


服部:芸人としての、ま、人前でやってるのと、こうやってお芝居としてやってるのっていうのは、ぜんぜん違いますか?
ムラコ:カテゴリーは違いますけど、やってることは一緒だと、昨日、仁さんに言われました。ぼくは、すごいそういう、芸人だからこそ、しっかり芝居をやらないといけない、っていう。他人の家に行ったらなんか気ぃ使うみたいのあるじゃないですか、
服部:はいはい。
ムラコ:他人の家に行ったらスリッパ履くみたいな。芝居だから、芝居のスリッパをはかなきゃいけないと思ってたんですけど。最近やっぱ、そうじゃないのかな、と。もっと僕よりうまい役者さんなんかいっくらでもいるのに、わざわざぼくを呼んでくれたっていうのは・・・。ムラコとして、なにか求めてくれてるのかな、っていうところで。
服部:おお。
ムラコ:うーん、でも、頭ではわかってるんですけど、身体は、芝居とお笑いは違うってまだ思ってますよ。なんでしょうね、これはね。正直、わからないですね。
服部:前に『夏が来ない』をやったじゃないですか、その後に、なんていうの、普段やってるのは、漫才?
ムラコ:漫才ですね、漫才、コント、
服部:漫才にもどったときに、あ、これ、芝居でもやったな、はいはいはい、みたいな。そういう、気づいちゃったときとかってありました?
ムラコ:『夏が来ない』をやったときに、ま、気持ちよかった瞬間、っていうのは、全身の力が抜けてるのに、セリフが出てきたっていうか、次のセリフを考えなくても、セリフが出てきた。すげー気持ちよかったですね。それは漫才も一緒で、自分の言葉で、自分のしゃべりたいことをしゃべってるんですよ。そこで何が縛られてるかっていうと、ボケに行く方向。
服部:ほんほん、
ムラコ:ボケはこれだって決めてるわけですよ、それにいくプロセスは、あんまり気にしない、そこにさえ向かっていけば、
服部:へー。
ムラコ:て、いう考え方で僕たち、作ってるんで。いろんな考え方で作ってるヒトがいますけど。ということは、自分の言葉じゃないですか、セリフじゃなくて。方向性です。たとえば、コンビニに行くってのは決まってて、そこにいく道順なんかはどうでもよくて、ローソンとかサンクスもどうでもよくて、とりあえずコンビニに行くんだっていう、いい意味でのあやふやなところでやってるんで。歩き方とかも決まってないですし、走ってもいいですし、チャリンコで行っても原付で行ってもいいんで、とりあえずコンビニに行くという方向しか、結論しか決まってないんです。もちろん、細かいセリフや動きは、自然と、二人の気持ちいいところで決まっていきますけど。
服部:はいはいはいはい、
ムラコ:で、それが芝居っていうのは、全部決まってるじゃないですか、ルーズさがないというか、
服部:決まってる、はいはい。
ムラコ:何で行って、どんな格好で行って、どんな表情で、どんな気持ちで、全部決まってるじゃないですか。その決まってるところと、自分が自然にできるところと、合わさったときですね、それがほんとに自然にできたときに、すげー気持ちよかったんですよ、
服部:それは、『夏が来ない』のときに、
ムラコ:『夏が来ない』のときに。それは、もう当日の深夜二時にできましたよ。全ての力が抜けて、セリフも完全にガーンって入って、もう、自然に、自分の言いたいことで、その役のヒトが周りの状況でやらされてることも自然ですし、自分のやりたいことでもあるし、っていうそう、いろんなところが合致したんですよね、
服部:へー。
ムラコ:それで横田さんが、今回呼んでくれたと思うんですけど。
服部:ああ、いいっすね、それ、
ムラコ:それは、漫才に近いですね。それは、漫才は考えなくてできるんですよ。普段の僕なんで、
服部:そっか。ふつーに見たいですね、それね。
ムラコ:一度は見に来てください。
服部:それはライブハウスとかでやるんですか、
ムラコ:下北空間リバティで、二月に一回やってますんで。


さて、インタビューにさわやかな一陣の風を吹き込むムラムラクエスチョンシックス、ムラコは何をひくでしょう。

ムラコ:一番最初の記憶は、どういうのですか。あー、一番最初の記憶。・・・おばあちゃんに、背負われて、保育所に行く、っていうのが。連れてかれてるっていう、泣きながら、
服部:あ、泣いてるんだ。
ムラコ:めちゃめちゃ。泣きながら行ってるのがたまに、フラッシュバックしますね。
服部:おー、思い出します?
ムラコ:思い出しますね。何ででしょうね。
服部:その記憶から後っていうのは、もうけっこう、連続してるんですか。それともなんか飛び地で、その、かなり昔の記憶が一個だけ残ってるっていう?
ムラコ:かなり昔の一個だけですね、それは。
服部:いくつくらいですかね、
ムラコ:4才とか、5才とかでしょうね、
服部:泣き虫でした?
ムラコ:いやなことは泣きましたね。泣いたら許されると思ってました。ぼく、家でほとんどしゃべらないんで、家族の前で。
服部:それ実家で?
ムラコ:実家で。僕が笑ってたりすると、姉が、泣きながらおかんを呼びにいって、「リョースケが笑ってるよ」っていうくらい。
服部:いくつのときですか。
ムラコ:もう高校とか。今でもそうですよ。こころ、開かないんです。ぼく、だから自分の飼ってるペットとかにも心を開かないスから。
服部:あ、そう。
ムラコ:無理なんです。ディズニーランドとか嫌いなんです。
服部:それ、ディズニーランドが嫌いなの?家族で行くのがきらいなの?
ムラコ:ディズニーランドを家族で行くなんてもう、ありえないです。
服部:え、彼女と行くとかはありえる?
ムラコ:それも、行きたくないんです、はっちゃけられないんです。だから子供とか苦手なんです。もう、この、「よしよし」ができないんです。「よっ」みたいな。
服部:子供に対しても。
ムラコ:できないできない、めっちゃ恥ずかしい、です。やりたいんですけどね、ぜんぜん。
服部:二人きりだったらやってしまうかも、赤ん坊と?
ムラコ:赤ちゃんコトバとか言えないですね、二人きりでもたぶん無理ですね。
服部:へー。あ、そうなんだ。
ムラコ:何に対しても閉ざしてるところ、あるんでしょうね。
服部:それでも、すっごい面白いね、
ムラコ:そのくせ舞台に立ってね、お笑いやってね。
服部:じゃ、きっと、自分の中でできる演技とできない演技があるんだろうね、
ムラコ:あります、あります、ぜんぜんあります。
服部:じゃ、それ、赤ちゃんコトバしなきゃいけない演技を要求されたら、そこが関門ですね。
ムラコ:んー、でも、金もらったらやりますけどね、
服部:そっか。できるかな。
ムラコ:できます、練習します。練習してないからできないんですよ。二十何年間、一回もやったことないとね。
服部:そっか、
ムラコ:女の前だとね、赤ちゃん言葉しゃべれるんですけどね。
服部:なんだ、そこはしゃべれるんだ。
ムラコ:冗談すよ。
服部:冗談かよ。


こころを閉ざしているムラコ、駅前劇場では全開ウェルカムでよろしくお願いしますよ。『ムラムラギッチョンチョン』、6月6日から駅前劇場にてスタートです。


インタビュー:2007年5月3日
*1:サミットクラブでのムラコの相方、静恵一。
*2:ハイポジション『夏が来ない』2005年1月

ムラコ information
ムラコのグッボイス http://torihitori.seesaa.net/article/41814130.html
ハイポジション http://www.knetg.com/highposi/


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