サニョールこと佐野陽一さんの登場で、ムラムラインタビューは第四弾。質問カードをひいて答えるムラムラクエスチョンシックスを、いきなり投入しちゃいます。


佐野:・・・ムラムラしちゃった思い出を教えてください。あー、そうっすね。一番やっぱ衝撃だったのは、中一か、中二ぐらいで。夜中にテレビ見てたんですよ。なんか目が覚めたのかな、トイレ行ったかなんかわかんないけど。で、もう家族はみんな寝てて、なんかテレビをつけたら、そういうまあ、ちょっとエロい映画をやってて、
服部:あ、映画。
佐野:外国の映画で。すげぇ、こんなこと思い出すこと、滅多にないな。すげぇ思い出しちゃった。でなんか、若い女の人と、年配の女の人がいて。たぶん、設定としては売春宿で、その若い女の人がたぶん売春婦デビューをするみたいな。年配のほうは売春宿の女将かなんかで、
服部:はいはいはい、
佐野:たぶんその若い方の女の人は、あんまりそういう経験がないというか。で、その年配の女の人が、その若い女の人と二人っきりで部屋でベッドで、なんかね、いろいろね、ちょこちょこまあ、やってるわけですよ、
服部:へー。
佐野:まあ、ようは、・・・たぶんその、目覚めさせるために、性に。
服部:ふうん、
佐野:それでね、年配の人がいろんなところを触ったりとかして、若いほうの女の人が、ちょっと感じてる、あれ、ちょっとこれ感じてるかも、みたいな感じの。そうそうそう。その最初の二人のやりとりが、ムラムラしましたね、
服部:へえー、
佐野:猛烈に。
服部:ちょっともう、目が覚めちゃったみたいな。
佐野:覚めちゃった、完全に、完全に覚めちゃいましたね、そうそうそう、そんな長いこと見てなくて、テレビ消して、ベッドに入ったんだけど、たぶんなかなか寝れなかった気がする。
服部:へえー。すごい、それわりと、最初の頃じゃないですか、ムラムラの。
佐野:いや、もちろん、ムラムラはあるんだけど、もっと若いときから、
服部:あー。強烈な記憶としては、
佐野:たぶんそれまで、いわゆるそういうビデオとか見たことなかったし、
服部:あー。
佐野:たぶんそういうのに触れたことがなかった。テレビとかで、エロいシーンとかあるじゃないですか、そういうのはたまたま見ちゃったりとかあったけど、なんかそういうのとはちょっと違う、
服部:ひとりだしね。
佐野:ひとりだし、なんだろ、
服部:外国?
佐野:外国っていうのもあったかもしれないし、
服部:それが何の映画だったかっていうのは今もってわからない?
佐野:ぜんぜんわかんない。
服部:気になるねちょっとね。
佐野:ま、確かに。なんだったんだろうな。今となってはぜんぜんわかんない、
服部:それ、たまたま見たら思い出しますかね?
佐野:そこのシーンを見れば、んー、絶対思い出す、


何の映画だかわかったあなた、サニョールにそっと耳打ちしてあげてください。さて、思いがけず古い記憶の扉をあけてしまったぼくらですが、さらりと芝居の話に向かいます。


服部:サスペンデッズ、こないだ見て、すごく面白かったんですけど、(*1)
佐野:ありがとうございます、
服部:佐野さんはゲイの役だったじゃないですか。でね、あれは、どうやって作っていくもんなのかな、中身とか。ラブシーンとかはなくて、設定としてゲイみたいな感じだったから、まあ、周りがそういう風に扱ってくれれば、いいのかもしれないけれども、でもなんかこう、僕の見ている感じでは、サニョールが、あの芝居の役のヒトが、ゲイに見えたわけですよ。
佐野:微妙なアレですね。
服部:いやいやいや、ほめてます、ほめてます。
佐野:あ、そうですか、
服部:それを、どういう風に作ったのかっていう、
佐野:そうっすね。ま、最初は、ゲイの気持ちを理解しようとしていたのが、なんか、うまくいかなくって、最終的には女の子の気持ちを、わかろうとした、
服部:へー。それは本番の、
佐野:もう、本番一週間きったくらいで。なんか、素敵な彼に抱かれたいっていう、女の子の気持ちを自分の中に持ってるのがいいかな、って思って。たぶん、ゲイの人は絶対に「ゲイの人の気持ちになりたい」とは思ってなくて、もっと違う・・・。なんていうんですか、男の人にそういう風に見てもらいたいっていう、抱きしめてもらいたいみたいなことを思ってるだろうから、それと同じように自分も考えた方がいいかな、というような。
服部:そういうふうにやったほうが、うまくいった?
佐野:うん、自分的には。なんか、たぶん、わかりやすかったんですよね。自分の中で整理がついたというか、
服部:なるほどな、
佐野:あとはなんか、ゲイのときに限らず、演出家からよく言われるんですけど、自分がやってて楽しいとか、気持ちいいところを見つけて、みたいな。
服部:へぇ。
佐野:ぼく自身がそういうおネエことばとか使ったりとかして、楽しかったり気持ちよかったりできる・・・。けっきょくその、無理しちゃってやってるとなかなか脱却できないというか、なるべく楽しく、居心地がよく、やれたほうが。きっとその人物もきっとそうだし、
服部:その気持ちよくっていうのは、どの役をやるときにも、同じだなって、考えてます?
佐野:うん、そう今、思いましたね、
服部:今回も?
佐野:うん、やっぱ今やってて、ちょっと考えてる。だからその、横田さんからこういう風にやってっていうように、具体的なこと言われて、それが普段の自分的にあんまり出てこないところだと、今まさにそういうあれなんですけど、それを、あんまり無理してやるんじゃなくって、どっかその自分の、気持ちのいいというか、落としどころを探すっていうようなことは考えてますね、
服部:へえ、
佐野:それはたぶん、前はあんまり考えてなかった、


サニョールはタテヨコ企画本公演、二度目の出演。ワークショップを含めれば何度も横田演出を受けてきているわけですが、他の演出家と芝居を作るときと何か違いみたいのはないのかしらん。そう水を向けると、なにやら考え込む佐野氏。


服部:あんまり違わないんですかね、サニョールの、なんていうのかな態度っていうか、構え方というか、稽古中の。
佐野:あーあー、いやでもやっぱでもね、違う。
服部:違う、
佐野:・・・あんまり変わんないけど、若干、横田さんのときの方が、ダメ出しされるときの態度が真摯、真摯というか・・・。で、自分のところではもうちょっと、苦笑いが多い、というかなんだろ、甘えかな?甘えなのか、なんなのか、
服部:へー。苦笑い?
佐野:「あ、そうですよね(苦笑)」、みたいな。
服部:中身は一緒だけど外側が違うっていうことではなくて?気持ちも違うんですか。
佐野:気持ちは変わんない。なんか言われて、じゃ、どうしようかっていう。たぶん、ダメだしされて、言われてすぐ「ああ!」ってわかるときと、どういうことなんだろうっていうときがあって。わかんないときの、その、「それどういうことですか」って質問したりとか、えーと、シンキングタイムがあったりとか、っていうのがちょっとたぶん違って。それは付き合いの長さだったり、
服部:タテヨコではどうですか、
佐野:んー、ま、そういうとこに比べると短い、
服部:じゃ、けっこう通じてるっていう?
佐野:いや、あの、シンキングタイムとか、質問をしたりとかをしない。しないのは、わかってるからじゃなくて、わかんないけど、今じぶんの質問していいときじゃないな、とか、シンキングタイムしちゃまずいな、とか。稽古の流れを止めるとかそういう。ま、本来、いつでも持つべきこと、気をつけるべきことだと思うんですけど、それがそうじゃない、付き合いが長かったりすると、やっぱ甘えが出て、
服部:あ、逆にそっちの方が、ちょっと待ってとか言えるってことか、
佐野:そうですね。そっちのほうが、自分勝手というか、
服部:結果はどうですか。他所でやるときでも、ほんとなら、許されるならそうしたほうがいいのか、あるいはその、自分を甘やかせずにぱってやるほうが、いいものが出てくるのか、ま、ケースバイケースだと思うけど、
佐野:たぶん、聞かないで、自分の中で処理できれば一番いいと思うんですよね、ヒトから聞くんじゃなくて。自分で見つけ出したことのほうが、たぶん、自分の血肉になるというか。だけど、ま、わかんないときは、ほんとやっぱ、やれないし。
服部:あー、そうですよね。
佐野:それはわかんないときに、このままわかんないままやったら、もっかいおんなじダメだしもらうなとか、無駄な時間を費やすことになる、とかって思うとたぶん、聞いちゃう。


演出が入って直後の一瞬、サニョールが静止するとき、そこに勝負がある。サニョールと愉快な仲間たちが真摯な態度で練り上げた舞台、ムラムラギッチョンチョンは6月6日から駅前劇場で。お楽しみに!


インタビュー:2007年5月3日

*1:サスペンデッズ『片手の鳴る音』神楽坂ディプラッツ、2007年4月

 

佐野陽一 information
サニョールのグッボイス http://torihitori.seesaa.net/article/43025650.html


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