さて、ムラムラギッチョンチョン客演インタビュー最終回、お待たせいたしました、ついに小高仁さんにご登場願います。


服部:お年と出身地を教えてください。
小高:40歳で、秋田県出身。
服部:東京にはいつ、出てきたんですか。
小高:高校卒業後。
服部:その後はずっと東京で?
小高:ずっと。
服部:お芝居はいつからやってるんですか、
小高:んーとね、21、2ぐらい。
服部:最初はじゃあ、18、9で出てきたんですか。
小高:そうそうそう。
服部:その間は何してたんですか。
小高:学生。
服部:そのときは、芝居とかやってたんですか。
小高:やってない、
服部:なにかサークルみたいなものは?
小高:サークル?やってない。
服部:え、何してたんですか。
小高:いや、ぼーっとしてた。
服部:ぼーっと?
小高:うん。それで、すぐ辞めたの。学校。
服部:そうなんだ。
小高:また専門学校入りなおしたりして。それでも、だめで。
服部:ええ。
小高:で、バイト先に、養成所行ってるひととかいたから、やってみようかなって。話さなかったっけ、飲み屋で?話してないか。
服部:この話、聞いてないですね。
小高:何をしたいのか、わからなくて。将来とか。
服部:それは、学生でいるときも、辞めちゃってからも?
小高:東京に行きたくて上京してきたけども、何していいかわかんなくなっちゃったな、ますます。
服部:へぇ。そうなんだ。それでアルバイト先で、
小高:そうそう、芝居やってる先輩がいて。その頃、フリーターっていう言葉が出始めた時期で。ただフリーターやってるよりかは、あの、芝居やってるんですとか、役者目指してるんですとか言ったほうが、けっこうかっこいいかな、とか。ごまかせるかな、みたいな、そんな感じ。
服部:それで最初は、どこに。
小高:青年座の夜間ってのに、初めて行ったの。
服部:へぇ、青年座。
小高:夜間だからね、養成所でもなんでもない。今はもうないけどね。
服部:これは専門学校みたいな感じだったんですか?
小高:まぁ、専門学校でもないけどね。ただ「養成所はこういうことしますよ」っていうのを半年で、短いサイクルで、やるっていう。
服部:ダイジェストみたいな?
小高:ま、いちおう、卒業公演は、アトリエでやるっていう。短縮版。
服部:それですぐ卒業しちゃったわけですね。
小高:そうそうそう。で、なんか、やめられなくなっちゃって。そこがそもそも始まりだよ。
服部:けっこう、面白かったですか。
小高:面白くはなかった。ただ、舞台立つの初めてだったから、変に病みつきになったっていうか。
服部:ああ。
小高:ライトを浴びるとちょっとあれでしょ。初舞台で、今までに味わったことのない、こう、あったわけだよ。それでちょっと、このままでやめられないな、って、もっとやってみたいなって。
服部:ええ、ええ。それで次はどう・・・。
小高:次は、養成所に入りたかったんだけど、お金ないから。今もそうだけどけっこう金かかるじゃん、まとまった金額。でも、ないから。タダの養成所みたいなところ受けたけどダメだった。青年座で知り合ったひとたちと、旗揚げして、
服部:これまだ、22、3とかですか。
小高:そうだね。で、結構活発にやってた。オリジナルでね。
服部:もしかして、書かれたんですか?
小高:書いてない。一緒にやってたやつの兄貴が、学生のころ作演やってて、書いてもらおうかって。
服部:これ、名前を教えてください。
小高:名前はシークレットだよ。
服部:えー。
小高:今はないからね。
服部:あ、そうなんですか。
小高:これはね、オレが名前付けたんだよ。
服部:えー、すごい知りたいなあ。・・・ま、おいおい。
小高:おいおいな。
服部:それで活発に活動してて、
小高:年3回くらい。まあ、がんばった。やりたくてしょうがなかったから。恥かきながら。
服部:バイトしながら。でも、けっこう、すごいっすね、年3回って。
小高:けっこうあれだよ、充実はしてたよ。ま、若かったからね。フットワークもよかった。
服部:何人ぐらいの団体だったんですか?
小高:5、6人かな。
服部:やっぱり、よそからも呼んだりとか?
小高:そこまでいかなかった。年3回ペースが3年くらい続いたのかな。
服部:その団体は、
小高:自然になくなっちゃったんじゃないかな。俺がまあ、半分主宰みたいなことやってたんだけど、辞めて、その後に続いたらしいんだけど、もう音信不通で。


ムラムラギッチョンチョン、チラシ用写真撮影をしたのは2月。迫力たっぷりの仁さんに話しかけることもままなりませんでした。飲み屋でほんの少し縮めた距離をたよりに、インタビューは続きます。


小高:それで、25で入ったの、第三エロチカに。
服部:あ、第三エロチカに。これはもう、見てたんですか、公演を。
小高:受けるって決めてから、その直前のやつを、2、3本見たのかな。
服部:ぼく、名前は知ってて、小劇場関係の本で読んで、
小高:その、小劇場ブームっていうのはピークは過ぎてたかもしれない、俺が入ったころはね。まだ大所帯は大所帯だったけど。やめてったヒトはいた後だったね。
服部:これ、試験とか、
小高:いちおうね、オーディションで。
服部:自分のところでは、主宰でやってたわけじゃないですか、で、こんどは劇団に入って芝居をやろうと。
小高:そうそう、うん。
服部:これは、なんかこう、自分でやるよりどこかに所属してやったほうがいいって思ったんですか。
小高:やっぱね、疲れてきちゃったんだね、もろもろのあれに。だから役者である程度、名の知れてるようなとこにいって、所属してやってみたいなって。単純にね。ちょっと違う感じでやってみたいなって。
服部:受けるって決めてから、第三エロチカの公演を見に行ったわけじゃないですか。でも見る前から評判っていうのは、
小高:だいたい、うん。小劇場ブームで、エロチカだったりとか、第三舞台だったりとか、遊眠社だったりとかいろんなのがあったんだよ、いっぱい。で、けっこう見に行ってたから、芝居はわかってはいた、どんなのをやるのかとか。
服部:そうすると、自分の好きそうな感じっていう、めぼしはついていた?
小高:まあね、めぼしはね。だから梁山泊とか、エロチカとか。新劇じゃねえなって、単純に。
服部:芝居を始めたばかり頃っていうのは、そんなに芝居を見てなかったんですよね。
小高:見てない。見てない。青年座の夜間を卒業して、やりたいなって気持ちが高ぶってからはすごい見た。
服部:へぇー。
小高:本数的には一番見てた、一週間にもう、ほとんど毎日見てた時期があったよ。
服部:お金、・・・って言っちゃいますけど
小高:うん、まあね。かかる。
服部:ですよね。
小高:でも別に半年も続けてたわけじゃないし。ある時期はそのくらいの見方をしてたっていう。どうやったらうまくなるのかな、とか。どうやったらいい役者になるのかな、とか。だって、これが、初めてなんだから。どうやったらいいのかなって、それこそ貪欲に、芝居って、役者ってどういうもんなのかって、やっぱ見に行って。そういう時期はあったよ。
服部:第三エロチカって大所帯だったってことなんですが、わりと最初のほうから、役があったんですか、
小高:オーディション受かったんだけど、最初は、新人は今年は出さないって。そうしたら、キャスティングされてた主役がなんかちょっと出れないって。もろもろの諸事情で、それでたまたま回ってきて。すぐ出れた。ラッキーだったね。ドストエフスキーの悪霊っていう芝居だったんだけど。
服部:それ主役だったんですか?
小高:に近い役だね。
服部:すげー。
小高:ま、ラッキーっちゃラッキーだったよ。


ラッキーだけ?エネルギッシュに芝居をむさぼる仁さんの姿勢が、いろんな状況を動かしてしまったように想像してしまう。ああ、貪欲な仁さん。血に飢えた狼。稽古場でも、その鋭い視線がほとばしります。


服部:あの、出番じゃない時に、獲物を狙うかのような目で稽古を見ている仁さんが印象的なんですけど、
小高:狙ってないけどな。
服部:すごくギラギラ見てるように思ったんですが、
小高:単純に俺のやり方じゃないの?何してるっていうか、なにもしてないよ、ぼーっとしてるだけだよ、
服部:えー?ぼーっとしてる感じじゃないですよ。
小高:ほんとに。一生懸命やってるなって、ハタからこう、
服部:見せてる?
小高:見せてる。
服部:自分が次にやるときのこととか、練ってたりするんですか、
小高:それはあるよ。でも、それ以上にね、人の芝居って見ると、わかりやすいじゃない。それを自分に投影するとかっていう、そんなとこまでそんな大それたことは考えてないよ、ぼやーっと見てるだけでも何か発見があるんじゃない?
服部:あいつ、ああいうふうにやってる、とか、
小高:その人に対してっていうのもあるし、横田さんの演出も言葉も聞こえてきて、ああ、こういう風に作ってるんだなとか。少しでもプラスになる事が絶対あるはずだから。そういう感じでただぼーっと見てるだけだよ、別に獲物は狙ってない。


タテヨコ企画、初出演の仁さんですが、そのきっかけは好宮温太郎でした。


服部:タテヨコとの馴れ初めみたいのを聞いてるんですけど、タテヨコの人では誰と最初に。
小高:温太郎。風琴工房で。(*1)
服部:これ、初めて共演したんですか?
小高:初めて。うん。
服部:それまでは、じゃあ、
小高:知らない。ずーっと前に、客演の人と知り合いだったから、たまたま一回見てたってのはある。タテヨコ企画を。
服部:『測量』でしたっけ。
小高:そうそうそう。
服部:そのあとで、風琴で温太郎と共演して、今回ついに。
小高:そう。客演も、2回連続で一緒だったからなおさら、(*2)
服部:ああ、風琴で?
小高:1回きりというよりかは、2回目の方が距離が近くなったというか、親しくなったというか。
服部:あ、そうですね、あと、『Black jack pizza』もそうですよね、(*3)
小高:そうそう。だから、風琴工房で共演してからはずっと見てるのかな、ちょっと小さい規模のは見てない回もあるかもしれないけど、ほとんどは、毎回観にいってる、タテヨコは、
服部:はいはい。ブラックジャックでは、どうして、温太郎を、
小高:風琴ではね、関わるのもそんな多くなかったし、
服部:シーンとして?
ほ:うんうん。んでまあ、『Black jack pizza』のプロデュースして、俺のやりたい役者とやりたいっていうのがあって、ま、何人もいるんだけど、温太郎とやってみたいっていう、ちょっと密にやってみようかと。そういうことだよ。
服部:『Black jack pizza』はけっこう前から温めてた企画なんですか?
小高:そう、漠然とはね、5年位前からは思ってた。少人数で、やりたい役者とやりたい、っていうのもあったし。たとえば漠然とこういう作品、作品というか、リアルな装置を立て込んだりっていうことじゃなく、小屋だけの空間で単純に、役者同士で密にやりたいっていう願望、
服部:ええ、ええ
小高:それでだんだんそういうのが膨らんでいって、タイミング的にはね、偶然というか、別にすごい立派な企画があったわけでもないし、準備してたわけでもないし、
服部:これ、次とかも考えてるんですか、
小高:気持ちはあるけど、お金がない。はっとりくん出して。50万貸して。
服部:いやいや、
小高:フフ。そりゃかかるよ。ちっちゃい規模でも、やっぱりそれなりに。
服部:そうか。これ、演出とかは特に立てずに、話し合ってっていう。
小高:そうそうそう、役者間でね、
服部:そのへんの、稽古の仕方っていうのは演出家が立ってるのと比べて、どういういいところがあるとか、難しかったりとか。
小高:単純に受身ではなかなか出来ないっていうところはあるよね、ましてや三人だし。
服部:はいはい。
小高:両面だよね。諸刃の剣じゃないけども。当初からリスクは当然あると思ってたし、覚悟の上であえて演出家を立てないでやるって。でも、やっぱり少しは客観的な目っていうのは必要なんだよ、役者っていうのは。誰かに聞いたりだとか。わかんない部分は当然あるわけだから。
服部:うんうん、
小高:その辺のサポートっていうか、そのへんはちょっとできないっていうあれはあったけど。次回やるんであれば、プラスにしていく部分ではあると思う。何が何でもっていう思いだけじゃなかなかね。稽古が進行していく上ではなんかしら必要になってくるかもしれない、
服部:演出助手、みたいなひともいなかったんですか。
小高:うん、そうそう。だからそれも一つの方法論ではあるような感じはした、今回。必ずしもってことじゃないけど、
服部:たとえば助手がいてもいいんじゃないかとか?
小高:いいんじゃないかって。


俳優が出演する作品を「選ぶ」とき、誰かに誘われたり、所属してる劇団の作家が書いたものに参加するというかたちで、受身になることが確かにある。仁さんがプロデュースした『Black jack pizza』は、俳優が作品に対してどのように欲望するか、ひとつのモデルである。


服部:今回、タテヨコの、稽古は、どういう感じですか、横田の演出とか。
小高:面白いと思うよ、やっぱり。初めてに近い雰囲気があるからね、俺にとってはね。芝居の内容でも中身でもそうだし。まあ、演出はどこに行っても、演出家が違ったりすればやり方も違うし、
服部:お芝居の感じが違うってことですか
小高:まあ、違うよね。いや、まあそれは、表面的なもので、役者のやることはそんな変わんないとは思うけど、
服部:共演者同士だと、セリフのやり取りはあるけど、そのなんていうのかな、こう、ああしろこうしろみたいな話とかっていうのはそんなに、しないものですか?
小高:いや、してもいいんじゃないの?必要でなければしないけど、でもなんかしらはしなきゃいけないんじゃない?
服部:そういうので、手ごたえがある座組み、ない座組み、とかもあるのかなって。
小高:あー、それはあるでしょ。それはあるけど、でも、一番面白いのは、出会いだよな、出会い。
服部:出会い?
小高:ずーっと何回も一緒にやってる人もいるんだけど、なおかつ新しい人とやる、会うっていうのも醍醐味だったり。それでどんどんそれが広がっていけば、また面白かったり。芝居もそうだけどさ。ずーっと一緒にやってるひととも、発見はなくちゃだめだし、あるとは思うけど。単純に初めての出会いの人とは、また違った単純な、あるじゃん、だから楽しいは楽しい。
服部:今は、楽しく、
小高:やってるよ。


仁さんの見事につるっつるな坊主頭をごらんいただけるのは『ムラムラギッチョンチョン』だけ。劇場に、ぜひお越しください!


インタビュー:2007年5月16日
*1:風琴工房 『機械と音楽』 2005年3月 下北沢 ザ・スズナリ
*2:風琴工房 『ゼロの柩』2005年9月 三軒茶屋シアタートラム
*3:仁3プロデュース#1 『Black jack pizza』 2007年2月 下北沢 OFF・OFF シアター


p.s. 最後のムラムラクエスチョンシックス。

小高:ムラムラしちゃった思い出を教えてください。難しいね。・・・毎朝だな、毎朝、
服部:毎朝?
小高:起きて、ムラムラっと。・・・難しいよ。

小高仁 information
ひとしさんのグッボイス http://torihitori.seesaa.net/article/43384162.html


このホームページに記載の画像、文章の著作権はタテヨコ企画もしくは作品・情報等の提供者に帰属します。無断転載・利用を禁じます。
Copyright(c)1999-2007 TateyokoKikaku All Rights Reserved.