■演出より■
現代の日本で問題となっている事象の節々に「ムラ社会」の存在を感じる。
経済成長と共に日本人は多くのムラ要素を捨ててきた。都市部においては古くから伝わるしきたりはほぼ消え去ってしまった。そういった社会を人々が望んできた。
しかし、その土地に暮らす者や時代が変遷しても、何故か「ムラ社会」的構造はいつの間にか形成されていく。
学校内でのいじめ、SNS・インターネット上でのリンチ、企業内での労使関係・企業倫理。そして地方都市には依然として残り続けている封建的社会制度。
怖いから人と繋がり、怖いから人を縛る。人より優位な地位を欲し、自己の安全が保障されたシステムの中で人を叩く。
しがらみに縛り付けられるのは怖い。
でも、
しがらみが全く無くなってしまうのも怖い。
今回の作品は50年以上前に実際に起こった殺人事件に想を得ている。
だが、その後もムラ社会的構造が引き起こしたであろう事件の例は枚挙にいとまがない。
日本人が捨てたくても捨てられない、変わらず抱え続けている問題をテーマに選んだ。
牧歌的芝居感を標榜するタテヨコ企画にしては、少しだけ苦々しい現実的な芝居にしようと思う。