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  タテヨコ企画 第34回公演
 
待たない人々
あるサラリーマンの死
ものがたり
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『あるサラリーマンの死』 東京公演2018年3月7日(水)〜18日(日)/大阪公演2018年3月24日(土),25日(日)
いつから考えていたのか、その消え方を。働いて、働いて、夢の中でも働いて。
すべての仕事を終えた男は「これで済んだ」と無愛想に笑う。誰に向けたものなのか。
その笑顔の向かう先を、私達は誰も知らない。

 
□ものがたり
 舞台は東京。仕事に生きた男が死ぬ。その直前の二日間の物語。
 定職にも就かず、ろくに帰省もしない息子。実家に寄生する妹。奔放な生活を送る母。
 振り返った時、家族の為に働き続けた男が理想とする家族は居なかった。
 存分に働いた男は、仕事を終えるとまるで自殺をするように消えていく。
 男の一生とはなんだったのか。家族とは何なのか。
 アーサー・ミラーの「セールスマンの死」をモチーフに、団塊の世代の男の生き様を、夫の目線と妻の
 目線、そして子供達の目線を交えながら描く。
 タテヨコ企画がお送りする「あるサラリーマンの死」は、現代の家族の肖像である。
父の死に様を捏造する

1949年にニューヨークで初演された名作「セールスマンの死」は、アメリカ商業主義の成長期において第一線の開拓者的役割を果たしたセールスマンの「夢の様な時代」が終わりを迎えたことを描いている。一昔前のアメリカにおいて、セールスマンとは自由競争の夢の担い手であったのだ。

一方、日本において高度経済成長が終わったのは70年代だ。1990年代にバブルが崩壊し、会社へ滅私奉公していれば収入も安定してるし出世もできる。生涯安泰という、ある意味「夢の様な時代」はとっくに終わりを迎えている。

なのに、私の父は最後まで滅私奉公をした人であった。子育てにはノータッチ。時代は高度経済成長直後の日本である。
レジャーブームが席巻する中、家族サービスなどあった試しもない。仕事をしていない時間は、釣り竿を作ったり、自身のルーツを探ったり、主に自分のことに力を入れていた印象であった。子供の頃、何度か釣りに連れて行かれたが全く楽しくない。父は一人で勝手に釣っていた。「釣りとは一人で楽しむものだ」という、格言めいた確信を得ただけである。

とにかく、家族内の印象が一方的に悪い人であった。母に、仕事が終わったら「もうすることがない」と常々言っていたらしい。色々、一人でできる趣味らしきこと(木工他)も色々していたはずなのに、いざその時になったら何も始めようとしない。弱いのに接待のため飲み始めた酒ばかり煽る毎日であった。周囲の者達が深酒を咎めようとも関係なし。家族の中に居ながら、気難しい独居老人のようだった。そして誰にもその心情を吐露することなく入院し、父は消えるように死んでいった。私には、その寂しい父の死は、ほとんど自殺としか思えないのである。

個人的な魅力をもって成功への道が開かれ、一代の冨を築くことができたセールスマンの夢がもはや昔日のものになったというのに、その夢にしがみつき自己を滅ぼしていく「セールスマンの死」の主人公ウィリー・ローマン。彼の生き様が、私には父の姿と被って仕方がないのだ。

父の人生とは一体何だったのだろうか。

長男である私から見た、自身の父の死に様を、そこへ至る最後の二日間を、「セールスマンの死」をモチーフに、ここに捏造しようと思う。すべては、父の死を受け入れるために。
作・演出
横田修
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