【上演記録】
タテヨコ企画第18回公演 〜タテヨコ企画10周年記念公演 第二弾〜
『夜まで待てない』  2009年5月13日(水)〜17日(日) ギャラリー悠玄

 
夜まで待てない』は銀座のギャラリー悠玄にて上演されました。期間は2009年5月13日(水)〜17日(日)。タテヨコ企画としては久々の劇場から飛び出しての公演でした。

 
ギャラリーのオーナー峰山洋平が亡くなり、 会場の地下ではギャラリー葬がとり行われています。実際に地下には洋平の遺品が展示されており、献花台が置かれていました。お客様には受付の後、地下に下りて献花をしていただきました。
写真左が洋平の息子、峰山春夫です。奥のガラス戸の向こうには妻である琉里の姿も見えます。遺言に従って現在は琉里がギャラリーのオーナーになっています。右の写真、左はギャラリーのアルバイト半田菊、中央は画家の越野孝、右はカメラマンの柳瀬直、共にギャラリー葬の手伝いに来ています。

 
新進気鋭の芸術家、琉里と春男の後輩である森下和也もニューヨークから駆けつけます。登場はオープニングでした。大きなひまわりの花束を持って現れた森下は、 洋平には大きな恩があります。地下に行くなり号泣。「今の自分があるのは洋平さんのおかげです」。そして、当時森下が思いを寄せていた琉里と春夫の初デートが実現してしまったのも森下のおかげでした。「哀れなキューピッドですよ、僕は」。話に乗ってこない春夫。森下は春夫の様子がおかしいことに気がつきます。

 
ギャラリーの2階では平和尚の展示が行われていました。友人の水野太郎以外はほとんど人が訪れません。奥さんや子供がいるのに作品作りをやめられず、生活に窮している平和「ミルク代にも事欠く毎日ですよ」、水野「奥さんと子供どうすんだよ!」。平和「お前には分かんないよ」。そしてそれの仲裁に入る峰山良樹(春男の叔父、洋平の弟)。良樹は中野で居酒屋「のむのむ」を経営しており、水野は以前そこでバイトをしていました。写真右、左が平和、中央が水野、右が良樹です。

 
本葬には来られず、今日は遠くから訪ねてきた斉藤夫妻。義則(春男の従兄弟)と蓮子。義則が単身赴任しているため、今日は久々の再開、東京駅で待ち合わせ「キャーみたいなギューみたいな」「駅チューとかしそうになったよね」と盛り上がっている。蓮子は妊娠しており、琉里の視線が気になります。琉里には流産してしまった過去がありました。それ以降、夫婦仲は冷めていき、春夫自身も覇気を失っていきました。皆、そんな春夫を気にかけています。

 
近所のギャラリー漆原陶芸のオーナーである漆原源造が訪ねてきました。洋平さんとは懇意にしていた様子。応対する春夫と琉里。春夫の作品を認めている漆原「作品を作るつもりはないのかな?」。気のない返事の春夫。作品をずいぶん発表していない春夫は、作品を保管してあった倉庫を引き払ってしまっていた。 春夫と琉里を気遣う漆原から「子供を作る気はないのかな?」「あれは張り合いになるよ」。

 
そこへ外でタバコをすっていた森下が戻ってきます。 作品を作っていないという春夫に、森下が詰め寄ります。「はりあってくださいよ昔みたいに」「つまんないじゃないですか」。そして、かつて春夫が口にした言葉「世界を変えてやるんだ、俺が」。何も返せない春夫。

 
森下の登場で興奮気味の越野。ちょっと引き気味の柳瀬。知らなかったけれど結果のりのりの半田、しかし越野の盛り上がりには冷めた感じです。写真は半田の言葉に打ちのめされる越野。「越野さんは何で描いてるんですが?」「もういい年じゃないですか」。すでに写真で食べている柳瀬は余裕の発言「食えてるだけだよ、ただそれだけ」。コンプレックスの塊の越野は逆切れ。さらにそれに切れる半田。半田は密かに春夫に思いを寄せている様子。

 
洋平の隠し子、田村冬美登場。洋平の最期を看取ったのは彼女でした。本葬にも来ていて、今日も来ると聞いていました。急にあわただしくなる面々。今日は彼女と遺言の話をしなければならないのです。ちなみに左の写真中央に写っている赤いピラミッド型のオブジェは、ギャラリー悠玄が所有する、とある建築家さんが製作した作品で、今回は特別に公開させていただきました。

 
献花を済ませ帰ろうとする田村を引きとめ、遺言の話を始める春夫の妹、夏子。親族を交えての話が始まります。全く聞いていなかった義則は呆然。良樹も場をまとめようと頑張る。そんな中、静かに話し合いは進んでいきます。遺言には田村にマンションを譲るよう書いてあったのだが、田村は拒否「結構です」、納得がいかない夏子「もらえばいいじゃないですか」「私ならもっと請求しますよ」。迷走し始める話し合い。右の写真は舞台側にあった客席からの視点。まるで話し合いに参加しているかのようです。

 
と、そこに2階の客だと思われていた 木島亜希が登場。なんと彼女も洋平の娘だというのです。亡くなってから母親に聞かされた木島、洋平自身も知らないことだという。突然の事態に困惑する一同。しかし洋平の写っている写真を見て納得せざるを得ない。そして名前。春夫に夏子に冬美に亜紀。良樹「あきがきたー!」。そう、隠し子は2人いたのです。思いのたけをぶちまける木島「こんちくしょー!」

 
献花をするため地下に下りた木島。 残される面々。途方にくれる。そこに田村「考え方じゃないですか」。そして、すでに亡くなっている自分の母親の話や自分と洋平が会っていた時の話を始めます。「結局、お父さんごっこに付き合ってもらってたんですね、私は」。「そんなのおかしいじゃないですか」と夏子。「絶対許しちゃだめですよ」。琉里は「こんなに子供がいて、お義父さん幸せだと思います」。「親父の幸せと、俺たちの幸せは違うから」と春夫。

 
そこへ、お酒を飲んで酔っ払った木島をもてあました越野があがってきます。それにつれられて皆は地下へ。残った春夫と夏子。家族の昔話を話す夏子。だらしなかった父親の話、そして洋平より先になくなった母の話。突然泣き崩れる夏子。「だめな家族だったね私たち」「私は、絶対幸せな家庭を作るんだ」「琉里さん泣かしたら承知しないからね」。答えられない春夫。

夏子も地下へ。 すべてを聞いていた半田。春夫に実家の蔵を提供しようと話をします。「やめちゃうのもったいないですよ」。そこへ森下があがってきます。森下は自分の展示の助手を春夫に依頼します。「うまくすればあっちでいいコネができますよ」。春夫と琉里に見送られ森下は帰っていきました。残される二人。

 
「幸せだったのかな、親父は」「俺が死んだら、お前どんな顔するのかな」。春夫の問いに苛立ちを隠せない琉里。 母親の死に目にも、父親の死に目にも会えなかった春夫、おもむろに紙袋をかぶり「このままじゃお別れの仕方がわからないよ」「ちゃんとさよならっていいたいじゃん」。そんな春夫を見て「言えばいいじゃない」「いつだって、どこだって、言えるでしょ言うだけなら」と琉里。「さよなら」「さよなら」とつぶやくように続ける春夫。じっと聞く琉里。

 
「お袋、さよなら、ゆっくり休め」「親父、さよなら、二度と浮気なんかすんなよな」「さよなら」「さよなら」「赤ちゃん、さよなら、」「俺、怖くて病室から出ちゃってさ、最後まで見てやれなくてごめんな、」「天国までは一緒にいってやれないけど、忘れないから、」「ごめんな」「ごめんな」。泣きだした琉里に自分がかぶっていた紙袋をかぶせる春夫。号泣する琉里。抱き合う二人。


物入れに身を隠し求め合う二人。そこへ下から夏子が上がってきます。「そういうことは、家で夜やってください」。気まずい空気が流れる中、手を取り合って地下に下りていく春夫と琉里。終幕。

●出演
峰山春男(売れないアーティスト)・・・瓜生和成(東京タンバリン)
峰山琉里(ギャラリーのオーナー、春男の妻)・・・市橋朝子
北村夏子(春男の妹)・・・舘智子
田村冬美(洋平の隠し子)・・・龍田知美
峰山良樹(春男の叔父、洋平の弟)・・・代田正彦(北区つかこうへい劇団)
斉藤義則(春男の従兄弟)・・・西山竜一
斉藤蓮子(義則の妻)・・・久行しのぶ
森下和也 (新進気鋭の芸術家。琉里と春男の後輩)・・・好宮温太郎
漆原源造(近所のギャラリー漆原陶芸のオーナー)・・・ちゅうり
半田菊(ギャラリーのアルバイト、大学生)・・・召田実子
越野孝(ギャラリー葬手伝い、画家)・・・藤崎成益
柳瀬直(ギャラリー葬手伝い、カメラマン)・・・佐藤幾優(boku-makuhari)
平和尚(二階で展示している)・・・舘野完
水野太郎(二階の客)・・・服部健太郎
木島亜希(洋平の二人目の隠し子)・・・大塚あかね
※劇団員


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